タイのコンドミニアムには、建物ごとに見えない境界線が引かれている。外国人が名義で自由に所有できる、いわゆるフリーホールドは、その建物の分譲面積全体の49%までと決まっている。残り51%はタイ人名義でなければならない。たったこれだけのルールが、どの住戸を登記できるか、銀行にどんな書類を求められるか、同じ間取りなのに値段が二本立てになる理由、そして送金前に弁護士がチェックすべきことまで、すべてを左右する。
ルール自体はシンプルだ。だが、その影響は単純ではない。タイで外国人買主が経験する失敗談の大半は、同じ勘違いから始まっている。手付金の受領書をもらった時点で「この部屋はもう自分のものだ」と思い込むことだ。実際はそうではない。この記事では、この49%枠がどこから来たのか、実際の計算方法、特定の建物の残り枠を確認する方法、そして希望の棟が満枠だった場合の選択肢を順に見ていく。リースや用益権、土地が対象外である理由など、より広い視点についてはタイでの外国人による不動産購入ガイドも参考にしてほしい。
49%ルールの出どころ
タイでは外国人は土地を所有できない。コンドミニアムはその例外として設けられた制度だ。1979年に制定されたコンドミニアム法(仏暦2522年)により、土地は建物のジュリスティック・パーソン(管理法人)が共同で所有・運営しつつ、住戸だけは外国人が単独名義で保有できるという所有形態が生まれた。同法第19条は購入資格のある外国人の範囲を定め、後の改正で追加された第19条の2が、1棟あたり外国人が保有できる総量の上限を定めている。この上限が設けられた背景は経済よりむしろ政治的なもので、海外資金にコンドミニアム市場を開放しつつも、特定の建物や通り、リゾート地全体が完全に外国人の手に渡ることは避けたいという狙いだった。
この数字、最初から49%だったわけではない。当初の上限は40%で、1999年の改正で49%に引き上げられ、その際バンコクでは全戸外国人所有ビルを一時的に認める特例まで設けられたが、これは2004年に静かに失効した。以来この数字は変わっていないものの、議論がなかったわけではない。2024年から2025年にかけて、プーケットやパタヤなどのリゾート地では上限を75%まで引き上げ、あわせて99年リースという案も政府内で浮上した。ただし本稿執筆時点ではいずれも提案段階で、法案は通っていない。噂ではなく、現行法を前提に判断すべきだ。
もう一点、見落とされがちだが重要な仕組みがある。この枠は建物単位で数えられる。登記されたコンドミニアムはそれぞれ独自の49%台帳を持っているため、同じデベロッパーが隣に建てた第2棟に空きがたっぷりあっても、第1棟はすでに満枠ということは普通に起こる。枠はブランドではなく、建物に属するものだ。
基準は戸数ではなく床面積
ここでつまずく人が多い。49%は戸数ではなく、平方メートルで測る。建物内の全住戸の分譲面積を合計し、そこからすでに外国人名義で登記されている面積と比較する。ロビーやジム、廊下、プールといった共用部分はこの計算に含まれない。プロジェクトによっては別登記の駐車スペースがあり、これは含まれる。
簡単な例で見てみよう。ある建物に住戸が200戸、分譲面積の合計が10,000平方メートルあるとする。外国人フリーホールドの上限は最大4,900平方メートル。すでに4,650平方メートルが外国人名義で登記済みなら、残り枠は250平方メートルだ。65平方メートルの1ベッドルームなら十分入る。だが280平方メートルのペントハウスは、戸数の見た目に関係なく入らない。
だからこそ、大きなペントハウス1戸がスタジオ2戸分よりも多くの枠を食う。売却済み戸数を数えるだけでは何もわからない理由もそこにある。外国人買主は上層階の広い住戸を好む傾向があり、戸数だけ見ればタイ人半分に見える建物でも、面積ベースではすでに枠切れということが起こる。必ず平方メートルで確認すること。
もう一つ注意点がある。デベロッパーが法定の49%より低い水準で自主的に外国人向け販売数を絞ることもある。タイの銀行融資の条件を保ちやすくするためだったり、高額住戸のために枠を温存しておくためだったりする。法律が定めるのは上限であり、実際にいくら売りに出ているかはデベロッパー自身の販売方針次第だ。
入金前に残り枠を確認する方法
確認先は3つあり、信頼度の順に並べるとこうなる。
まず販売事務所。まともなデベロッパーなら、現在の外国人保有率と、購入予定の住戸がどれだけ枠を消費するかを記した文書を出してくれるはずだ。日付入り・署名入りで受け取ること。ただし、これはあくまで売主側の記録のスナップショットであり、法律がその枠を確保してくれるという保証ではない点は理解しておく必要がある。
中古住戸の場合は、ジュリスティック・パーソンが債務なし証明書とあわせて外国人枠証明書を発行し、この両方がなければ土地局はフリーホールド移転の登記を受け付けない。これらの証明書は登記の直前にしか発行されず、数日で内容が古くなってしまうため、早い段階で仮確認を取り、決済時に正式な証明書を取得する、という進め方が実務上の定石になっている。
本当の答えは土地局の登記簿にある。弁護士を通じて、その建物の外国人所有登記を土地局の公式記録と直接照合してもらうことができる。タイではごく一般的なデューデリジェンスで、費用もわずかだ。これを省いて営業担当のスプレッドシートを鵜呑みにするのは、その年最大級の取引を賭けにするようなものだ。
ここに典型的な落とし穴がある。枠が確定するのは移転登記の瞬間であって、予約書にサインしたときでも、手付金を払ったときでもない。オフプランの場合、この時間差は2〜3年に広がる。1月に予約しても、竣工は2028年、その間に他の外国人買主が次々と移転登記を先に済ませていく。先に登記した者が枠を取る。予約書の日付は土地局にとって何の意味も持たない。上海やモスクワ、シンガポールで積極的に売り込まれた建物なら、引き渡しよりずっと前に外国人枠が埋まってしまうこともある。
対策は契約に書き込むことだ。決済時に対象住戸のフリーホールド枠が確保できなければ、手付金は全額返金される、という条件を明記させる。別プロジェクトへの充当ではなく、頼んでもいないリースへの自動転換でもなく、返金だ。タイの消費者保護委員会は2025年1月31日付でデベロッパー契約の規制を強化し、手付金の自動没収条項などを禁止した。これは買主側に有利に働く変化だが、枠に関する条件そのものは自分で契約に書き込む必要がある。誰も代わりに入れてはくれない。
売主に対し、この住戸が外国人枠の範囲内で販売されていること、そしてフリーホールド登記ができなかった場合は全額返金となることを契約書に明記するよう求めよう。この一文をためらう開発業者は、それだけで多くを物語っている。
枠が埋まっていたら
希望の建物に外国人枠の残りがまったくない場合を考えよう。タイ人枠の住戸は、フリーホールドとしてはそもそも外国人には手が届かず、土地局も登記を拒否する。まっとうな道は2つ、そして絶対に選んではいけない道が1つある。
1つ目の正当な道は登記済みリースだ。外国人はタイ人枠の住戸を最長30年リースでき、これは土地局の権利証に記録される。合法であり、プーケットやサムイでは一般的で、フリーホールドより安い。ただし契約期間については冷静に見る必要がある。「30年+30年+30年」を謳う契約は何十年も前から出回っているが、2025年3月にタイ最高裁は、慎重な弁護士たちがずっと警告してきたことを確認した。あらかじめ合意された更新の連鎖は、財産権ではなく個人間の約束にすぎない、というものだ。30年目の更新は、そのときの所有者次第で決まる。それは元の売主の相続人かもしれないし、建物ごと買い取った見知らぬ第三者かもしれない。30年リースは30年物の資産として、フリーホールドより明確に低く値付けし、更新条項は計画ではなく希望として扱うべきだ。
2つ目の道はもっと単純で、別の建物を選ぶことだ。タイにコンドミニアムは不足していない。枠のプレッシャーが集中するのは限られた一角、ビーチフロントのプーケット、パタヤ中心部、バンコクのスクンビットの一部、サムイの人気の丘陵地帯などだ。500メートル内陸に入るか、BTSの駅を1つずらすだけで、枠に余裕のある建物が見つかることも多く、平方メートルあたりの価格も良いことが多い。まず現在の物件情報を条件から探し、特定の棟にこだわるのはその後にしたほうがいい。
そして絶対に避けるべき道が、ノミニー株主を使ったタイ企業経由の購入だ。外国人がタイ人枠の物件を書類上支配するためだけに会社を設立するもので、これは違法であり、黙認されていた時代はもう終わった。2025年半ば以降、タイ当局はかつてない規模でノミニー構造の調査に乗り出しており、起訴や強制処分の事例も出ている。「みんなやっている」と親切ぶって言うエージェントがいても、乗ってはいけない。
誰も語らないリセール時のプレミアム
この枠は入口では制約になるが、いったん中に入れば、今度は自分に有利に働き始める。
外国人からの需要が強い建物では、外国人枠のフリーホールドは供給の限られた商品になる。分譲面積のうち外国人が手にできるのは永遠に49%までで、新規供給が出るのは外国人所有者がタイ人に売り戻したときだけだ。結果として、1つの建物の中に2つの市場が生まれる。同じ2ベッドルームの間取りでも、外国人フリーホールドとしての価格と、タイ人フリーホールドまたはリースとしての価格に差がつく。プーケットやパタヤの物件広告では「外国人枠あり」が、他の市場でいう「海の見える部屋」のように前面に出され、枠が早々に埋まった建物ほどその価格差は広がる。
出口も明快だ。外国人名義の住戸が別の外国人に売却されても、その登記はそのまま住戸に紐づいて移るため、次の買主は新たな枠を探す必要がない。リセールの対象は、その建物を欲しがるすべての外国人買主であり、これはタイ人枠の売主には決して手が届かない層だ。リースは逆方向に働く。年を追うごとに残存期間が短くなり、残り19年の契約に魅力を感じる買主の層は薄い。
だからといって、外国人枠のコンドミニアムが必ず儲かるわけではない。タイの不動産市場にもサイクルがあり、パタヤやバンコクの一部では供給過剰が繰り返し起きているし、購入時に払ったプレミアムを回収するのに何年もかかることもある。ただ、条件がほぼ同じ2戸を比べたとき、枠の内側にある住戸のほうが流動性は高く、市場もそれを価格に織り込んでいる。
FETフォーム——資金は必ず海外から
外国人フリーホールドに付随する条件は枠だけではない。同じ第19条の枠組みでは、購入資金は海外から外貨建てでタイに送金されることが求められ、それを証明しなければならない。
その証明になるのが外国為替取引証明書、通称FETだ。海外から送金すると、受け取ったタイの銀行がバーツに両替し、5万米ドル以上の送金にはFETを発行する。それより少額の送金には銀行の入金証明書が発行され、こちらも土地局は受理するため、中規模の送金を複数回に分けても問題なく対応できる。決済当日、土地局は購入代金全額をカバーするFETまたは入金証明書がなければ、外国人枠のフリーホールド登記を進めない。FETがなければ登記はない。すでにタイの口座にバーツを持っていたり、現地収入から支払おうとしている人はここで引っかかる。その資金がどんな由来であれ、この要件は満たされない。
書類を綺麗に保つコツは3つある。まず外貨のまま送金し、両替はタイの銀行に任せること。すでにバーツに両替されてから届いた送金では、そもそもFETが発行されない場合がある。次に名義を一致させること。送金人または受取人は権利証に記載される買主本人であるべきで、夫婦で共同購入する場合は両方の名前を送金記録に残す必要がある。最後に送金指示に目的を明記すること。「コンドミニアム住戸12B([建物名])の購入代金」といった具体的な記載がよい。これらのFETは後々も役に立つ。将来この物件を売却する際、売却代金をタイ国外へスムーズに送り出せるのも、この書類があってこそだ。
契約前のデューデリジェンス
外国人枠での購入にあたって確認すべきことを、一通りまとめておく。
- その建物がコンドミニアム法に基づき登記された正式なコンドミニアムであることを確認する。コンドミニアム登記のない「アパートメント」やサービスアパートには、外国人に売れるフリーホールドは存在しない。
- デベロッパーから日付入りの枠確認書を書面で受け取る。中古住戸の場合はジュリスティック・パーソンからの仮確認を取る。
- 弁護士に依頼し、残り枠と売主の権利を土地局の記録で直接確認してもらう。販売事務所の記録だけで済ませない。
- 予約書と売買契約書の両方に枠に関する条件を明記する。決済時に外国人フリーホールドが確保できなければ、手付金は全額返金とする。
- すべての支払いを海外から外貨建てで行い、名義を一致させ、送金目的を明記し、FETと入金証明書はすべて保管しておく。
- 中古住戸の場合は、決済時にジュリスティック・パーソンから債務なし証明書と外国人枠証明書の両方を取得することを求める。
- オフプランの場合は、デベロッパーのエスクロー体制と過去の引き渡し実績を確認し、その建物における2年分の待機期間が枠リスクをどれだけ高めるかを見積もる。
- 決済当日の費用、まず2%の移転登記手数料を予算に入れ、誰がどの費用を負担するかを書面で合意しておく。
タイ以外にも検討中の国があるなら、HomeNSearchのタイページで価格や購入コスト、現行の物件情報を一箇所でまとめて確認できる。エージェントに何本も電話するより早い。
よくある質問
外国人はタイのコンドミニアムを本当に単独名義で所有できるのか
できる。49%の枠内であれば、外国人買主は自分名義のフリーホールドを土地局に登記でき、これは相続も売却も、他の国のフリーホールドと同じように扱える。上限が適用されるのは建物全体の外国人保有割合に対してであり、あなた個人の住戸に対してではない。
住戸を売却したら枠はどうなるのか
別の外国人に売却すれば、外国人としての登記はそのまま住戸に付いて移り、建物の保有比率は変わらない。タイ人買主に売却すれば、その平方メートル分はタイ人側に戻り、将来の外国人購入のための枠が空く。この非対称性こそが、人気建物の外国人枠住戸にプレミアムが付く大きな理由の一つだ。
30年リースは更新できるのか
そのときの所有者が更新に同意すればできる。ただし2025年3月の最高裁判決以降、事前に合意された更新条件は財産権ではなく個人間の約束として扱われるため、「30年+30年」という構造が保証するのは正確に30年だけだ。その前提で価値と価格を判断すべきだろう。
リースの場合もFETフォームは必要か
土地局はリース登記にFETを求めない。送金ルールが適用されるのはフリーホールドのみだからだ。とはいえ、送金記録を残しておくのは賢明だ。資金の流れが明確になり、リース終了時や譲渡時に資金をタイ国外へ持ち出す際もスムーズになる。



